大山三鈷峰・ユートピア 2 平成18年10月15日 所在地:鳥取県
三鈷峰の頂上標高1516m。山頂はケルンが4基積まれていてあまり広くない。目の前のユートピア左側斜面は赤く紅葉した木々が多く、もう葉の落ちた木もあった。

この小屋周辺の尾根は、森林限界で低木のみになります。7月下旬には高山植物の楽園となり、多くの登山者がお花畑を目当てに登ってくる。小屋の上部の象ヶ鼻を過ぎると、尾根は大山最高峰の剣ヶ峰を経て弥山に至る縦走路です。当然縦走禁止ですが。

左に見える山は烏ヶ山。頂上部分が鳥のトサカのような形をしています。大山の弥山頂上で「カラスが見える、登りたいな。」と懐かしそうに言う登山者が多い。大山山系でこのユートピア・三鈷峰と同じく愛されている山ですが、鳥取西部地震により山頂付近が崩落して登山禁止となったままです。
三鈷峰を後にし、分岐を過ぎてユートピア避難小屋に行く。小屋の周りはあまりスペースがない。7月下旬は人でごった返すそうだ。

気象条件が厳しいところなので、外部は痛んでいるように見えるが内部はピカピカで真新しい。とても綺麗で、窓は見えている北側以外は2重窓。玄関も2重になっていて吹雪の時も利用できそう。北側の窓の一枚は何処かに紛失したようだ。
象ヶ鼻まで歩く、標高1550m。この岩の下で左に振子山に行く分岐がある。

何故、ここだけ累々岩がと積もったのだろうか。周辺の岩はもろく風化して崩れ、硬い岩だけが残ったものと思われる。大きな岩なのに、乗ったらゴトンと音がして動く岩もありヒャッとした。

上には縦走禁止の小さな看板があり、周囲の写真を撮っていたら突然風が吹きだした。撮影しようと構える身体が揺れてしまう。風が強くなったので小屋に引き返すことにした。
ユートピア小屋と三鈷峰。
11時過ぎに大山寺駐車場を出発し、途中寄り道をしながら来たので、ユートピア分岐に着いたのが2時過ぎ。三鈷峰や象ヶ鼻の散策で、あっという間に3時となる。三鈷峰から見ると小屋には2〜3人いたのだが、私が分岐に戻る前に下山してしまった。

果てさて困った。上宝珠越から砂滑りに降りる最期の20m程が危険だと聞いていても、どの様に危ないのか判らない。人に聞こうにも午後3時の山に登る人はいない。
仕方ないので小屋でコンビニおむすびを食べて休息した。

その時、小屋の横を通り過ぎる人影が。
おむすびを食べながら慌てて窓を開け「どこから来られました。」と尋ねると、「大山寺を11時過ぎに出発して大休峠・野田ヶ山から親指ピーク・振子山と通ってきました。」
実は、大山の登山起点の要所に左の張り紙がある。まさかそこを単独で縦走してくるとは考えなかった。親指ピークは面白い地形で行きたかったが、今年の大雨で登山道が崩れたようだ。

「一緒に降りませんか」と言うと「良いですよ。」と快諾。どちらのコースで下山するか聞けば、「今から下宝珠越まで降りると、大神山神社まで2時間かかり日没となる。砂滑りで下山します。」とのこと。象ヶ鼻の風が、小屋周辺でも吹きだして窓がガタガタ鳴っていたので、砂滑りの落石の事を聞けば大丈夫でしょうとのこと。コースの事も良く知っているようで心配ないとのことでした。
先程見た親指ピーク周辺の尾根はザックリ崩れている。良くこんな所を通ったものだ。

聞けば両方崩れていて怖い所があり、手こずってこんな時間になってしまった。一応ロープが張られていて、危険とは書いてあっても通行禁止とは書いてない。

実は私は、臆病者で小心者、優柔不断な上に石橋を2〜3度叩いて渡る性格です。とてもそんな冒険は出来ません。私なら引き返します。いや元から登りません。
振子山頂上付近の尾根道はずり落ちています。恐ろしい。

何でも、普段は持たないストックをザックに付けてきたら、登山道の木が引っかかって大変だったとのことでした。3時22分ユートピア小屋を出発して下山開始。

この人はとても足が速く、スタスタ、タタタと歩きます。既に距離10km弱、標高差1000m以上を歩いてきた後です。信じられない身の軽さ。私は登りは遅いが下山は早いほうです。私が最高速近くなのに、あちらは私に合わせて速度をセーブしています。山を駆けるとはこの人のことだ。

上宝珠越まで降りると心配していた風はありませんでした。
下は、登りの途中に撮影。ロープが張られた岩場を団体さんが下山しているところ。岩場の十数メートル上が上宝珠越で、そこから右の上宝珠沢に急傾斜で降ります。

降り始めは足場はしっかりしていますが、後の部分が少し足許が悪く、極太のロープが張ってありました。ロープが終わると、最後の2m位は岩のフリクションで降ります。危険と言えばそうなのでしょうが、脅されたほどではなかった。

しかし、北壁はそそり立っています。地形を見れば落石の常習地帯なのは頷けます。
上の砂滑り最上部に口を開けているのは雪渓です。砂滑りに降りる直前に白い雪がはっきり見えました。10月15日なのに雪が残っているのです。

上の岩場から落ちてきた落石は大きいものは下まで落ちて行き、粒の小さなものだけ上部の雪渓の上に残るようです。

しかし、落石の多い春先は砂が多いのですが、今は雨で流れて、砂滑りではなく砂利滑りなのだそうです。大雨の後は雪渓が崩れて段差が出来、そこに落ちると危険なので、何時も通れるわけでは無いそうです。
砂滑りに降り立って上を見上げます。傾斜は45度位でしょうか。立つと砂がしっかりした足場となるので、急傾斜でも怖くはありません。

人が通ると、下の濡れた砂が出てくるので黒くなります。後で気付いたのですが、写真左下の黒い部分は落石が削った跡です。
私は何時も、登山中はデジカメを片手に持って歩くのですが、上宝珠越からの下山は両手をフリーにするためザックに仕舞いました。と言うことで、以下写真無し。

ここからストックを一本借りて砂滑り開始。走って斜面を下るのです。
砂は粒が小さいと一歩の歩幅が広くなり、粒が大きいと滑りが悪いようです。踵から着地するように注意しながらバランスを取り、一寸先を見るのはスキーと一緒。スキーならこんな急斜面はとても滑れません。もちろん前にこけると顔で滑るし、後ろに尻餅をつくとちょっと滑り落ちるでしょう。
滑り出すと、山駆さんが振り返りながら、「もっと足を高く上げて。大きな石があったら避けて通りましょう。」と指示される。彼の速度が速いので、距離が離れる。しかし、私が落とした石が当たると怖いので、距離を開けた方が良い。実は1個石を落としてしまいました。

傾斜が緩くなり、大きな石が増えてくると砂滑りは終わり、後は谷を下るだけ。降りながら「浮き石に乗るなと言うが、大山は浮いていない石がない。」と笑わされた。握り拳大の石の所で、私がソロバンに乗ったようにバランスを崩すと「アハハ」と笑い。彼がコンクリートの上の砂で滑りかけると私が笑う。山駆さんとワイワイ大声で話しながらの楽しい下山。

ユートピア小屋から休憩ゼロで大神山神社に4時16分着。54分で降りられました。
右のピンクが登りコース、緑は下山コースで、赤が砂滑りです。

富士山には砂走りと言う下山コースがあり、それを楽しみにしている人も多いらしいが、大山のユートピアコースも砂滑りが楽しみの一つらしい。

砂滑りは短時間に下山するので少し体力が必要なのと、登山靴が傷むのが欠点です。私たちは着けませんでしたが、スパッツも装着した方がよいです。結果、私は片方の足に石が入りました。
三鈷峰・ユートピアマップ  別ウインドウで開きます。
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