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氷ノ山 仙谷のサンカヨウ復活

和名:山荷葉  メギ科  サンカヨウ属  多年草
  鳥取県:準絶滅危惧 平成24年7月17日
 平成24年6月23日
氷ノ山の仙谷コース沿いのサンカヨウ群落が復活し始めた。

仙谷登山道の一番目鎖場のすぐ上にあり一昨年平成22年に、鹿に食べられて壊滅状態だったのに、2年経って生えてきたのだ。

写真左上はまだ生えていないが登山道脇の下部は勢いよく生えている。
上の写真は一番再生した部分で、生えてもまだらな所もあり、斜面上部はシダだけでサンカヨウは生えていない。

サンカヨウの再生が嬉しくて、ついそればかり撮影し、斜面全体の撮影を忘れた。面積としてはまだ数分の一だ。

サンカヨウはある程度の標高がある山なら何処でも生えている。今まで、鳥取県の絶滅のおそれのある野生動植物を記載したレッドデータブックとっとり初版(2002年3月発行)では重要な植物とはされていなかった。

しかし、2012年3月の改訂版では準絶滅危惧に指定され「選定理由:シカの食害により、ここ数年県内東部では個体群が大きな被害を受けている。西部ではまだ食害はないが、今後の推移に注意が必要。」と書かれている。
 平成22年6月17日 鹿の食害から20日程か?
一昨年の様子。

※画像をクリックすると拡大画像( 1824×1368ピクセル 580KB)が別ウインドウで開きます。

仙谷登山道で鹿に食べられた群落を見た。サンカヨウは 葉だけ食べられ茎は残されている。写真最上部の斜面まで茎が立っている。

ここは氷ノ山でも大きな群落で、このサンカヨウの花を見るために仙谷登山道を歩く人もいる。この姿はショックだった。

ネットで調べると、5月22日には沢山の花が咲いた群落が写されていて、5月29日には別の人が食い尽くされた写真をアップしている。その一週間の間に鹿が食べたようだ。
上の写真右側の斜面。
※写真をクリックすると拡大画像(557KB)が表示されます。

左に残っている植物はサンヨウブシというトリカブトの一種。

トリカブトというと猛毒だと思われるだろうが、サンヨウブシは無毒だと言われている。でも鹿は食べないようだ。

サンカヨウの群落は壊滅的な被害を受けた。当たり前だがレッドデータブックの大きな被害を受けた場所に、ここと氷ノ山の自然探勝路の群落が含まれているだろう。
登山道から横を撮影。

食い残された茎が立っている。サンカヨウは斜面に均一ではなく、下部の登山道沿いに特に密生していたようだ。

食べられて2週間以上経ち、黄色く腐れ始めた茎もある。

左の花穂はシシウド、右の葉はサンヨウブシ。シシウドも食べられているが、葉を少し食べ残している。
 平成22年10月1日 食害から4ヶ月後
平成22年10月1日に仙谷を通った。

食べられたあと芽吹いた様子はない。
上の写真左側部分。

手前にシダが生えているが、元は奥の樹木の際までサンカヨウが優先的に生えていた。
サンカヨウの茎も消え、斜面は裸地になっている。
 平成23年8月28日 食害から1年3ヶ月後
平成23年8月28日の様子。
2枚の写真をパノラマ合成しました。

今までサンカヨウの葉の下で生育していた植物が勢力を拡大しているが、それでも斜面は裸地に近い。

シダが優勢でサンカヨウは全然生えていない。再生の気配は全くなかった。
 平成24年6月23日 食害から2年1ヶ月後
そして今年のサンカヨウ。

何故、サンカヨウは食べられてすぐに芽吹かないのか、もちろん2年後に芽吹くことがあるのも全く知らなかった。

ブナの実が豊作と不作を繰り返すのと似ているのだろうか。鹿が食べてすぐ再生すれば絶好の餌になる。翌年は芽吹かず餌の量を減らし、鹿の個体数が減少した所で再生を始める作戦だろうか。
サンカヨウは雪崩の多い斜面を好む。そのような斜面は絶えず土の移動があり、不安定でネマガリタケ等の植物は好まない。その様な環境でも種の保存を計るため、年単位のタイマーが仕込まれているのかも知れない。

この場所もまた食害に遭う可能性があり、平成22年に鹿に食い尽くされ、今年も芽吹いていない場所もある。鹿の食害は平成22年に特にひどく、平成23年もギンバイソウの食害が多く見られた。

若桜町や鳥取県でも、鹿の駆除に力を入れているが、とても個体数増加に追いついていない。しかし、昨年の豪雪、そして今年の豪雪で鹿の数が若干減少したのかも知れない。今後の変化を見守りたい。
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